−−私たちの会はいろいろと貴団体にはお世話になっており、大変有り難く思っております。成瀬ダムの公示という新しい局面にあたり、どのようなことをお考えか、お聞かせください。
私たち「なるせの清流とみどりを守る会」としては、行政側が「成瀬ダム、ゴー」というお墨付きを得たとしても私たちの疑問が依然として消えない以上、引き続き啓蒙と活動を続けていく決意です。会の名前にあるように、この東成瀬村の誇れる清流を守ること、またみどり豊かな森林資源を継承していくことはこの村の命だと思っています。
−−最近、国土交通省と秋田県知事あてに「要望と質問書」を出されましたね。
11月19日付けで両方に提出しました。国土交通省には九項目にわたり、秋田県知事には五項目にわたっています。最近の事態はますます成瀬ダムの根拠に疑問を感じさせるものばかりですから。
−−東成瀬村の人々は清流へのこだわりが強いですね。
全国町村会がアンケート調査しているんですが、約80%の町村が「豊かな水、きれいな水を残したい」と回答しているんですね。日本の農山漁村の原点ではないでしょうか。私たちの成瀬川は有形無形に様々なものを私たちに与えています。その清流が濁ってしまうことは到底許せないことです。これは全ての村民に共通の意識だと思います。この夏に横手地方で大雨が降りましたが、山内村の大松川ダム下流の落合地区合流点でははっきりと濁りの差が出ました。大松川ダムは最新の選択取水設備を備え付けているわけですが、それでも濁りを解消することは出来なかった。私たちは、大雨の後連続的に観察に出かけたんですが、日を追うごとに2つの川の濁りの差がハッキリしてくる。一方の川が澄んできているのにダム側の川は依然として濁っているということが続きました。毎日あそこを通る村民の方からも報告がありました。
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大雨の後まもない落合地区合流点
(左がダムのある松川、右がダムのない黒沢川)
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数日後の同合流点。右から流れる黒沢川には清流が戻っているが・・・。(左は「守る会」会長の柳氏)
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−−私たちはダムのある皆瀬川の実態を調査しておりますが、年々ひどくなっているように感じます。成瀬川との合流点では一目瞭然ですから。
ええ、全国どこでもそういう話です。隣の山形県の寒河江ダムを視察したときも漁協の方々が嘆いていました。ダム河川の濁度問題については国土交通省も研究しているはずで、国民に正直に公表する責任があると思います。
−−ところで、この夏国道342号線わきに「成瀬ダムの見直し中止」の立て看板を立てられましたが、反響の方はいかがですか?
前から立てようと思って今回実現したわけですが、清流を守りたいという良識ある村民にとって好意的な反応が寄せられているようです。看板の文言についても慎重に検討しまして、多くの村民の共感がえられるようにしました。
−−とてもいいですね。村に入るたびに私は励まされています。
みどりを守るという環境面についても、昔から私たちは周りの山々から多くの幸をいただいてきました。ダム湖になる森が消え、付替道路が森を切り裂くことによって私たちが予想できないような環境面の資産や山の幸を失うことになると思います。
−−この秋、予定地周辺では測量のための基準点確保のために大規模な樹木伐採が行われましたね。
私たちも何ヶ所か確認していますが、ひどいもんです。クマタカの巣に近かろうが、平気で切っている。そもそもあの地域は本来「森林生態系保護地域」となるべき所です。去年はブナの実などが豊富で今年にかけて森の生き物たちが多く繁殖したものと思われます。今年もクマタカやイヌワシなどの飛来が頻繁に観察されました。私たちは共同で猛禽類や森の動物たちを守る活動をしていく必要があると思っています。
−−はい、いっしょにやっていきましょう。また、今回の質問書でも触れていますが、栗駒から流れてくる強酸性の赤川の水がダム湖や周辺に与える影響も心配ですね。
もともと北ノ俣沢は天然イワナの宝庫でした。マンガ「釣キチ三平」のイワナ編の舞台とも言われています。最近心無い釣り客などの影響で個体数も減っては来ていますが、ダム湖が沢に食い込むことによって大きく魚の環境が変化せざるを得ないのではないかと心配しています。
−−最近、ダム事業の先駆けとしてこの岩井川地区の342号線バイパス工事が始りましたが。
ダム工事のための工事車輛が通るためには必要ということなんでしょうが、実際はダム堤体の岩石も現地調達ですから一旦始れば工事車輛が頻繁に行き交うということはないでしょう。まあ、成瀬ダムの工事がもう始まったんだという世論づくりの意味合いが強いですね、実際は村民にとっては生活道路そのものですよ。
−−工事といえば、巨大ダム建設が大手ゼネコンの談合で仕切られていた、というようなニュースもありましたね。長野県の浅川ダムでも住民団体が問題にしているようですが。
ええ、この成瀬ダムに関してもその内部文書によればすでに「西松建設」がやることになっているそうです。「本命企業」がこれまでも次々と落札しているとのことですね。まさに「先に建設ありき」のダム事業が明かになったわけで、この美しい自然が「ゼネコン&政官界」の汚れた手で破壊されていくということに憤りを感じます。成瀬ダムの見直し・中止を求めて運動を強めていきたいと考えています。
−−これからも生活に結びついている「清流とみどり」を守るために一緒に頑張っていきましょう。
今日は忙しいところどうもありがとうございました。(文責:HP管理者−−奥州光吉)
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