●骨粗しょう症(下)


 
骨粗しょう症(上)の続き) 


 ★骨粗しょう症とは★

 今まで述べてきたことで、だいたいお分かりでしょう。生命を維持するためには常にカルシウムが必要なこと。本来骨はそのための貯蔵庫だったこと。体に入るカルシウムが少なくなれば、体は骨からそのカルシウムを引き出していくこと。その状態が続きますと骨の中のカルシウムがどんどん失われていくのは当たり前です。それが骨粗しょう症なのです。

 カルシウムが不足してくると、初めに骨梁(こつりょう)の中のカルシウムが減ってきます。そして弱くなった骨梁は小さな骨折を起こして次第に間隔が広くなり、小部屋が拡大された状態になっていきます。それをレントゲン写真で撮ってみると、骨の中に「す」が入ったように見えてきます。骨粗しょう症の名前はそこからきました。

 骨粗しょう症になると骨を内部で支える力が弱くなりますので、骨が潰れやすくなります。ちょっとしりもちをついたり重いものを持ち上げようとしたりした際に、脊椎(せきつい)骨の圧迫骨折を起こす事があります。また、なにもしなくても独りでに潰れることもあり、少しずつ背中が曲がり、身長が低くなってきます。もちろん転倒してあちこちの骨を折る人もいます。

 カルシウムがさらに減ってくると、小部屋はますます広くなり、表面の硬いところもだんだん薄くなってなってきます。ここまでくる人というのは半身まひの人とかなにか別の病気で寝たきりになっている人が多いのですが、体重を支えるのがやっとで、少し体をひねっただけで骨を折ったりします。付き添いさんが体位交換しただけで折れた例もあります。

 

 ★骨粗しょう症の診断方法★

 骨粗しょう症はもともと人間の老化の過程の一つであるともいえましょう。昔のように長生きする人が少なかったころには別に問題にはならなかったのが、現代のようにだれもが70から80歳まで生きる時代になったためにその数が増え、注目されるようになったのです。

 先程も触れましたが、骨粗しょう症の最大の問題は骨折しやすくなる、ということです。わけても脊椎骨や大腿骨の骨折は寝たきりの原因になることもあります。逆に言えば、そこさえ骨折しなければどうってことないとも言えます。

 ということは骨粗しょう症の診断はこの骨折しやすい部位でするのが一番理にかなっています。そこで、私たち整形外科医は以前より腰や大腿骨のレントゲン写真を撮って、それをもとに骨粗しょう症の診断をしていましたが、最近はいろいろな測定方法が開発されて、機械で簡単に調べられるようになりました。

 測定方法には、手の骨とアルミニウムの板をレントゲン写真に撮りその比較で見る方法、踵(かかと)の骨を超音波で調べる方法などがありますが、現在もっとも正確とされているのがDEXA法といわれるものです。機械にもよりますが全身から腰椎、前腕骨などの部位別に骨塩(カルシウムを含めた骨の全成分)の量を測定することができます。

 現在の骨粗しょう症の診断基準は脊椎のレントゲン写真と機械による検査とを組み合わせたものになっています。まずレントゲン写真で脊椎に圧迫骨折があるかどうか見ます。その上で骨がどれだけ薄くなっているか判断します。あるいは骨塩量を測定して、若い人たちの平均と比べてどれだけ少なくなっているか比べて、70%以下だと骨粗しょう症と診断します。骨塩量の測定は原則として腰椎でしますが、腰椎では評価が困難な場合に他の部位の骨塩量を用いるとされています。

 

 ★骨粗しょう症の治療★

 骨粗しょう症にもいろいろの段階があります。軽度のものは@カルシウム分の多い食事をするAカルシウムの吸収力を高めるために日光浴をするB骨にカルシウムがつきやすくするために運動する。以上の三つの生活習慣が大事です。

 ある程度高齢の方には上の三つに加えて、カルシウムを薬で補ったり、ビタミンD、ビタミンKなどの薬を用います。ビタミンDは割合古くからある薬で私などもよく患者さんに処方しますが、最近脊椎や大腿骨の骨折をかなり減らす効果があるというデータも出てきて、意を強くしております。このほか、骨の形成を促す注射や薬などいくつかの治療を組み合わせるのが一般的です。

 中には比較的若い段階から極端に骨粗しょう症が進行している人がいます。こういう人には婦人科の先生と相談して、女性ホルモンを使います。女性ホルモンを使うと皮膚などに潤いが出て若返ったようになりますが、子宮がんの頻度が若干高まるため、定期検診が必要です。

 骨折の予防という観点からは、自宅の中の整理や、手すり、段差のない構造なども重要です。骨粗しょう症による骨折は自宅の中でつまずいて転んだりして起こることが多いからです。

 年を取るにしても、骨折したり、寝たきりになったりすることなく元気に過ごしたいものです。そのためにも今からでも骨を丈夫にしようではありませんか。

千田 直(水沢市・整形外科医師) 胆江日日新聞社より