琥珀(こはく)って何?
 ウイスキーの熟成された色合いをよく琥珀色と表現します。
 琥珀とは、水晶、瑪瑙(めのう)や翡翠(ひすい)と並んで、洋の東西を問わず最も古くから人々に親しまれてきた宝石の一つです。
 
日本国内で産出する琥珀のほとんどは、岩手県久慈市とその周辺地域のものです。それも数キロ単位で継続的に採掘しているのは、現在、(有)上山琥珀工芸だけです。国内で見かける琥珀のほとんどが今では輸入品になっています。
 
久慈地域に産する琥珀は、1億年近く前(映画ジュラシックパークでお馴染みの恐竜時代)の樹脂が化石化したもので、現在の南洋杉の仲間が元になったと考えられています。南洋杉は、大きいものでは100
mを超える巨木で、その樹液の一滴が私達に安らぎを与えてくれると思えば、何か不思議な気分ですね。
 久慈原産の琥珀は、
古くは日本各地の縄文時代の遺跡から発掘されています。その当時から装身具として使われていたようですが、儀礼的なものとしても琥珀に何かを感じていたようです。また日本国内はもとより、古い文献の中に中国への朝貢品として琥珀が記されています。これらの琥珀は久慈原産と考えられています。広く交易品や朝貢品として昔から珍重されていたようです。
 身近なところでは、岩手県出身の宮澤賢治は石好きで、若い頃は「石っこ賢さん」と呼ばれていました。彼の文章の中には多くの琥珀が登場しています。
 一方、西欧に目を向けると、古代ギリシャでは琥珀をエレクトロンと呼び、すり合わせた時に静電気が発生することから電気の語源になったようです。またヨーロッパでは、琥珀を「人魚の涙」「幸福の石」と呼んで大切にしてきました。
 時空を超えて愛されてきた神秘的な輝き。永い時を土の中で過ごした後、再び光りの下へ帰ってきた琥珀。他の宝石とは一味違う温もりをどうぞお確かめ下さい。