栗駒山・栃ヶ森山周辺森林生態系保護地域

 ダム湛水区域に隣接する東側の区域は、「栗駒山・栃ヶ森山周辺森林生態系保護地域」(合計16,310ha:参考として白神山地世界遺産部分は17,000ha)に指定されています。森林生態系保護地域は、保存地区(右下地図の茶色部分)と保全利用地区(同緑色部分)とに分かれていますが、保存地区は、保護地域の核となる部分で、人手を加えずに自然の推移に委ねることになっています。また保全利用地区は、保存地区の森林に外部の環境変化の影響が直接及ばないよう緩衝の役割を担っています。ところが、成瀬ダムの湛水区域がこの森林生態系保護地域と重複していることが分かりました・・。      
 湯沢工事事務所が1998年10月に発表した「成瀬ダム湛水区域と栗駒山・栃ヶ森山周辺森林生態系保護地域の重複について」という文書のなかでは、

『 当事務所が秋田県東成瀬村で事業を進めている成瀬ダムの湛水区域と秋田営林局が施業管理計画において設定している栗駒山・栃ヶ森山周辺森林生態系保護地域の重複面積が、地上測量の結果、約0.51haであることが分かりました。

 今後、この結果をもとに秋田営林局側と具体的な協議を行い、その取り扱いについて調整を図っていきたいと考えています。』

と述べ、経緯説明のなかで、

『 栗駒山・栃ヶ森山周辺森林生態系保護地域は、平成6年3月に設定され、以後、秋田営林局によって森林生態系保護地域として国有林の管理が行われている。同地域の設定に際しては、成瀬ダム事業に関係する範囲(湛水区域(洪水時満水位)と堤体材料の採取地(狐狼化山の一部)等)の森林生態系保護地域からの除外について、秋田営林局側と互いに調整を行なった。ところが、平成9年7月に準備書をまとめる段階で、湛水区域(洪水時満水位)と森林生態系保護地域との間に何らかの行き違いによるものと思われる重複があることが分かり、準備書においても重複がある旨、記述したものである。』

としています。

 重複があったことはお粗末な線引きだったとしか言いようがありませんが、なによりも森林生態系保護地域の設定に際して、建設省側の”湛水区域を確保したい旨の要望”に秋田営林局側が”配慮”するという”調整”が行われたことは、大きな問題ではないでしょうか?

結局、右図に示すように、本来保護地区を守るために存在する保全利用地区がダム湛水区域部分によっていびつに侵されているのです。

森林生態系保護地域のブナ林

森林生態系保護地域

 

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