クマタカの巣の至近距離に監視カメラが設置された

11月10日の朝日新聞秋田版の記事要旨

 

クマタカの巣(カメラ取り付け前)

  

右下の巣を監視する左の木のカメラ

これらの写真は、場所がわからないように明暗を変えています。

巣から約5メートルの至近距離にカメラが設置された

監視されるクマタカの巣

信号の増幅機器と思われるセットが近くのブナの木に

カメラ取り付けに使われた?と思われる梯子。

カメラからのケーブルが地中に埋設されている

カメラが取り付けられた木に這うケーブル

朝日新聞秋田版11月10日(↓)

巣の至近距離に監視カメラ

 東成瀬村に計画されている成瀬ダムの水没予定地付近で、生息が確認されたクマタカの生態調査のため、巣の回りに監視カメラやマイクを設置する工事が始まっている。調査は、国土交通省湯沢工事事務所が委嘱するイヌワシ・クマタカ調査委員会(小笠原ロ委員長・秋田大学名誉教授)が6月に決めたが、カメラは巣から7〜8メートルの距離なため、自然保護団体などから「近すぎる。保護より研究が目的では?」という声も。調査委は「影響はない。きちんとしたデータが必要だ」としており、保護や調査のあり方を巡って論議が続いている。(中村 邦之)

調査のあり方巡り論議

 工事事務所によると、監視カメラ、マイク各1台とアンプ2台を設置、約2キロ離れた建物までケーブルを設置する。11月中に終わり、12月からクマタカの営巣行動をビデオ録画し、生態調査を始める。

 カメラは防犯用に似た円筒型、レンズの直径が約7センチ、本体の長さが約12センチで、遠隔操作は出来ない。クマタカの巣がある木から4〜5メートル離れた隣の木の高さ30メートルの所につけられ、巣からは7〜8メートル離れて斜め上から見下ろす形だという。マイクは15メートル、アンプは25メートル離れた木に設置してある。

 工事事務所は「クマタカは営巣期(繁殖期)に神経質になるが、9月中旬から11月末までは非営巣期で巣に近寄らない。この期間に作業した」という。

昨年5月に発見

 調査対象の巣は昨年5月に発見されたが、昨年、今年とも繁殖はなかった。今回の調査は「巣を使っているのか」「産卵や抱卵の様子」「食性」などを調べる。

 絶滅危惧(き・ぐ)種のクマタカについては、旧環境庁が定めた「猛禽(きん)類保護の進め方」の指針で、営巣地から半径1・2キロ程度の範囲は「営巣高利用域」とされ、ダムなどの大規模工事は行うべきではないとしている。成瀬ダム計画では、巣と工事区域が近く指針にふれる可能性が大きいとされる。

 クマタカ調査の例としては、緑資源公団が行っている山形県朝日町の林道工事がある。予定地から500メートルのところにクマタカの巣があり、95年から今年まで数カ所の定点で望遠鏡による観測を続けている。同公団は「観察による圧迫感を与えないためカメラは使わなかった。定点観測もカムフラージュ用のテントを使っている」という。

保護団体 営巣放棄の恐れ

調査委  まずデータ必要

「目的はき違え」

 今回の調査について、日本自然保護協会の吉田正人常務理事は「行政が行う調査は工事の影響を知るのが目的。繁殖が成功したか、餌場の地域などを調べるべきで、個体の生態を綿密に調べるのは生物学者の仕事だ。目的をはき違えているのではないか。カメラを異物として警戒し、営巣を放棄するかもしれないリスクがある。クマタカへの配慮に欠けている」と話す。

 成瀬の水とダムを考える会代表の奥州光吉さんも「クマタカの巣近くで工事をしていたので、その監視を兼ねて現場に行ってみると、偶然カメラ設置やケーブル埋設が分かった。生態を詳しく知りたい専門家が、工事事務所の調査に便乗したように感じる。クマタカにとって現在の餌場が水没することの方が致命的なことを考えて欲しい」。

「注意して実施」

 これに対し、調査委の小笠原委員長は「科学的にデータを取って調べようということで、委員会で決定した。カメラ自体は動かず、クマタカに影響はない。テリトリーの広がりはカメラではわからないので、調査員が双眼鏡などの目視で調べる。我々もいろいろな調査の経験があり、十分注意してやっている」と話す。

 また、調査委のメンバーで、秋田駒ケ岳イヌワシ観察グループ代表の千葉和彦さんは「田沢湖でイヌワシ調査した時、雛(ひな)が死んだのを『餌不足だ』とした人もいたが、ずっと観察していた私は排泄(はい・せつ)物を出せずに死んだと確認できた。データがないと間違った判断をしてしまう。カメラの影響があるとの裏付けがあれば再検討の余地もあるが、憶測にすぎない。どのように巣を使うか、きっちりとデータを取った上で保護対策を考えるべきだ」と話している。
(11/10)

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