赤滝と能恵姫伝説
成瀬ダム建設予定地の区域内には、古くから県南地方の住民に「雨乞いの神様」として崇められている「赤滝」があります。江戸時代後期の民俗学者、菅江真澄が栗駒山に向かう道すがら立ち寄って、「駒形日記」に記録したという由緒ある場所です。
かっての赤滝神社は、日照りの年にはお参りにくる農家の人たちが、村の中から延々の列を作っていたほど厚い信仰を集めていた場所だと聞きます。赤滝神社の由来は、今を遡ること280年余り昔の伝説の女性、能恵姫に源を発しています。能恵姫は、農民たちを渇水と洪水の不安から救うために、竜神と化して赤滝に住みついたと言い伝えられています。赤滝は、この地域の昔を偲ばせる貴重な文化遺産であるといえます。成瀬ダムの目的は主に農業用水確保にあるようですが、もし本当にこのダムが水不足や洪水対策に役立つものであるとしても、“現代の赤滝”として農民の信仰を集めるかどうかは疑問です。『どうかダムを止めて』という能恵姫の涙声が、聞こえてくるようです。
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