●乳幼児の具合の見方

 小児期の中でも乳幼児期は、熱を出したり咳(せき)、下痢、嘔吐(おうと)などで病院通いをすることが結構多い時期です。どういう風に、この時期の子どもの症状に対処していけばよいのか考えてみましょう。

 確かに発熱は、いわゆる風邪をはじめとする呼吸器感染症などいろいろな病気に伴う症状で、重要な症状です。ただ、必ずしも熱が高ければ高いほど病気が重いとは限りませんし、逆に熱さえなければ心配ないという訳でもないのです。

 では最も注意してみてほしいのは何かといいますと、当たり前と言えば当たり前のことですが、「元気さ」の程度です。もう少し具体的に述べますと、乳児であれば、母乳あるいはミルクの飲み具合、表情、顔色の善し悪し、泣き声の元気さなどに注意して観察して下さい。

 熱が39度くらいあっても、哺乳力がまずまず(例えばいつもは1回のミルクを200_gぐらい飲むところ、150_gぐらいは飲める)で、顔色も悪くなく、泣き声も元気であれば、夜中ならば朝まで冷やしながら経過をみるくらいの余裕はある状態です。ただ、翌朝には熱の原因は何か、小児科で診察を受けましょう。

 逆に、熱がなくとも、乳児でミルクの飲み具合が明らかに悪い(普段は200_g飲んだところ、30〜40_gくらいしか飲まない)、表情、顔色も悪く、泣き声も弱いなどの症状のある時には、なるべく早い受診が必要な状態です。

 それぞれについて具体的な病気を挙げてみましょう。

 前者は、以前この欄にも取り上げられましたが、突発性発疹という病気があります。6ヶ月を過ぎた赤ちゃんが突然40度にもなる高熱を出しますが、その割には元気で機嫌もそう悪くなく、ミルクの飲みもほぼ普通に近く、高熱が3日間続いた後に解熱して体全体に発疹の出るウィルス感染症です。

 もし、高熱に加えて、水分もほとんど摂れず元気のない表情であれば、重症な感染症(肺炎、髄膜炎、脳炎など)なども考えなければなりませんので、できるだけ早く診察を受けましょう。

 次に後者、熱がなくてもなるべく早く受診が必要な疾患として、乳児期後半に好発する腸重積という病気があります。腸が腸の中にどんどん入り込む一種の腸閉塞で、間隔をおいて不機嫌に泣き、顔色も悪くなり、ミルクの飲みも悪く、嘔吐する病気です。

 早ければ元に戻すことができて、すぐに元気になりますが、進行すると外科的手術が必要になることもありますので早い受診が要求されます。

 乳幼児の下痢や嘔吐もしばしばみられます。もちろん、原因も大事ですが、とりあえず脱水に注意が必要です。特に乳児は体重全体に占める水分の割合が高いので、最低限必要な水分も摂れなかったり、摂っていてもそれ以上に下痢などで水分が失われると容易に脱水を起こします。

 眼が落ちくぼんで元気のないぼんやりした表情になっている時には、既に脱水がかなり進んでいる状態ですので、急いで点滴し水分を急速に補給しなければなりません。

 下痢が続いている時には、なかなか難しいかもしれませんが、水分の摂り具合、顔の表情に注意すると共に、尿が出ているかどうかもできるだけみて下さい。脱水が進んでいくと尿が出なくなります。

 最後に、一時点だけで判断しないで症状の経過をみることの大切さを述べて終わりにしたいと思います。

 風邪から肺炎やほかの合併症を起こして、今まで比較的元気だった乳幼児が急に元気がなくなることもあります。症状が悪化し、水分も十分に摂取できないようであれば、たとえ薬が残っていても受診するようにしましょう。

小笠原芳彦(水沢市・小児科医師) 胆江日日新聞社より