●片頭痛
頭痛は、一度も経験したことがない人はいないと言ってよい程のありふれた症状であり、頭痛を訴えて外来を受診する人は非常に多いものです。また受診する診療科もさまざまで、内科のみならず、脳腫瘍を心配する人は脳外科、閃輝暗点が前駆する場合は眼科、副鼻腔炎のある人は耳鼻科、頸部(けいぶ)の痛みが強いため整形外科を受診する、などです。このように頭痛の患者さんが臨床各科に及ぶ理由の一つは、頭痛の原因疾患が多彩なためです。
頭痛を大別すると器質的疾患により生じる症候性頭痛と明らかな器質的疾患のない機能的頭痛に分けられます。機能的頭痛は反復あるいは慢性化することが多く、慢性反復性頭痛とも呼ばれます。この頭痛の代表は片頭痛、群発頭痛、緊張型頭痛です。読者からの質問も多かった頭痛について数回にわたり述べていきます。
機能性頭痛は国際頭痛学会による分類によると
(1)片頭痛
(2)緊張型頭痛
(3)群発頭痛及び慢性発作性片頭痛
(4)その他の非器質性頭痛
に分けられています。今週は片頭痛についてお話します。
★片頭痛の特徴★
頭の片隅に頭痛があれば片頭痛ではなく、次に述べるような臨床症状の経過を特徴とするものです。一過性の前兆に続いて片頭痛が始まるものと、前兆を伴わないで片頭痛が始まるものとがあります。前兆とは、視野障害、特に視野の一部が欠けて周辺がチカチカと光る閃輝暗点が典型的で、両眼に生じる同名半盲型の視野障害です。他にもまれですが一過性の感覚障害、しびれ感、脱力、失語などの言語障害等、脳の局所障害が出現することもあります。
これらの前兆は通常5〜20分、長くて60分程続き、前兆が消失するころに激しい拍動性頭痛が右または左半分に出現します。この頭痛は4時間以上持続し24時間以内に治まるとされています。頭痛発作が始まりしばらくすると悪心、嘔吐(おうと)、まれに下痢などの消化器症状を伴うことがほとんどです。発作中には光に鋭敏になったり、物音が強く頭に響いたり(音過敏)、歩行に際しふらつき感を訴えることも多いです。人によっては前兆に先立って気分的な落ち込み、気分がすぐれない、いつもの激しい頭痛が始まる感じ…など数時間ないし1日前に認めることもあります。
片頭痛発作は毎月のように起きる人もいますが、1年に1回位の人もいて、回数には個人差があります。また片頭痛の60〜70%の割合で女性に起こりやすく、兄弟姉妹や母親などに同様の発作をみることが多いようです。また10代、20代から始まり50代以後の発症はまれだという特徴もあります。
★片頭痛の発生機序★
従来、血管の収縮と拡張が生じて頭痛が起こるとする血管説が信じられてました。しかし、大脳皮質の血管細胞の過剰興奮によると考える神経説が登場し、さらに三叉神経と血管の関係を重視する三叉神経血管説が加わり議論されているところです。また最近セロトニン説が再評価され治療薬との関係で脚光を浴びています。
★片頭痛の治療★
片頭痛の臨床経過、症状から治療に関しては2つの事が重要です。1つは頭痛発作時の急性期の状態を改善し、頭痛そのものを消失、軽減する頭痛急性期の治療です。もう一つは頻回な発作のある人に片頭痛を軽減、消失する予防的治療です。私は片頭痛発作急性期には速効性の酒石酸エルゴタミン剤の内服、最近使用可能になったスマトリプタン注射薬を使用し、予防的治療にはCa拮抗(きっこう)剤塩酸ロメリジンを投与しています。さらに神経ブロック等も併用し頭痛の治療に一定の効果を認めています。
最後に片頭痛の誘発因子について述べます。参考にして下さい。
片頭痛の誘発因子
【特別な食品】 【睡眠】 【ホルモン(女性のみ)】 【頭頚部(けいぶ)に局所痛】 【環境因子】 【運動(ランニング、登山、スキー、水泳、性交など)】 【アレルギー】 【ストレス、緊張、たまったストレスから開放されたとき】 【薬(ニトログリセリン、降圧剤など)】 |
冨田 幸雄(水沢市・脳神経外科医師) 胆江日日新聞社より