●Q&A(2)
★質問★
最近、頻尿に悩まされています。冷え性なので夜間の排尿後はなかなか寝つけなくて困っています。毎日入浴して体を清潔にしていても膀胱(ぼうこう)炎になるのでしょうか。また、水分は控えたほうがよいのでしょうか。(胆沢町 女性)
★答え★
今日、医学の進歩とマスコミがあいまって、いろいろの医学知識が広く普及していますが誠に結構なことと思います。
膀胱炎もその一つで、患者さんが来院した折りも「頻尿と排尿痛があって云々」と優等生なみの言葉で訴える人が間々見受けられます。
以下膀胱炎について述べてみます。
膀胱炎は細菌だけで起こる単純性膀胱炎と膀胱結石や膀胱腫瘍(しゅよう)さらに、男性では前立腺(せん)肥大やがんなど、別の病気のために膀胱炎を起こす複雑性膀胱炎に区別されますが、複雑性膀胱炎は複雑かつ、難解ですので、今回は主として単純性膀胱炎をとりあげます。
★原因★
単純性膀胱炎は大部分が大腸菌で起こります。殊に女性に起こりやすいのですが、その理由は、女性の尿道は肛門に近い所に位置し、しかも3〜4cmと非常に短いからです。(男性では尿道の長さは18〜20cm)、しかも肛門は大腸菌がウヨウヨしているので、膀胱炎の80%から90%は大腸菌と言われています。
ただし、膀胱の粘膜は防御能力が強く細菌が侵入しただけでは発症しません。長時間排尿をがまんしたり、風邪をひいたり、疲労やストレスなどで全身の防御反応が低下した折りに起こりやすいのです。性行為も影響します。
★症状★
頻尿、排尿痛、尿混濁が膀胱炎の三大症状です。そのほか、残尿感、下腹部痛、膀胱部圧迫感、時に尿をもらす事もあります。
膀胱炎は発熱を伴わないのが普通で、もし発熱があったら、膀胱より上部に細菌が登った腎盂腎(じんうじん)炎等の合併症が考えられます。
★治療★
膀胱炎は割合治りやすい病気で約一週間の服薬で十分と言われています。前述の複雑性膀胱炎でも二週間もすれば一応の症状が消失するのが多いのです。それ以上続くとなれば種々検査をすべきです。
膀胱炎のなりはじめには安静、保温に努め、アルコール等の刺激物は避けて下さい。さらに、水分を十分とる事も大切です。よく、おしっこが近く、かつ排尿痛があるので、水分をとるのを我慢したという患者さんを見受けますが、これは全く逆なのです。一日に1500ccから2000ccの尿が出るよう水分摂取をおすすめします。ただし、心臓病、腎臓(じんぞう)病の方は主治医と必ず御相談下さい。
★予防★
局部を清潔にするのはもちろんですが、おしっこを我慢しないこと、過労もよくありません。また下痢、便秘にも十分注意しましょう。そして普段から、水分を十分摂ってください。ただし前述のように心臓病、腎臓病の方、あるいは目下病気で通院中の方はかかりつけの先生の指示に従って下さい。
最後に一言。前述のように膀胱炎は非常に治りやすいものと、治り難いものがあります。売薬などで症状はすぐ消失しても、数週間ないしは数ヶ月後に何度も繰り返す時は診察を受けるようすすめます。そのような膀胱炎には時に、重大な病気が隠れている事もあるからです。「たかが膀胱炎、されど膀胱炎」と御記憶下さい。
★質問★
腹部大動脈瘤の手術をして約二年経過しました。腹部大動脈瘤を遮断し合成繊維性の人工血管を動脈瘤内に植え込みました。経過は良好ですが疲れがひどく、すぐ横になってしまいます。高齢なので術後の日常生活が不安です。再発防止策や食生活などについて伺いたいのですが。(水沢市 男性)
★答え★
動脈が正常範囲を超えて拡大した場合を動脈瘤(りゅう)と呼び、おなかの一番太い動脈にこの瘤ができたのが腹部大動脈瘤です。この病気の主な原因は動脈硬化で、患者さんの中には高脂血症や高血圧症を、時に糖尿病などを伴っている方もおります。手術では瘤の部分の動脈を人工血管で置き換える方法がとられます。
さて、ご質問に順次お答え致します。
▽手術後一年で経過は良好にも拘わらず、疲れ易くすぐ横になってしまうとのことです。手術そのものの影響はもうない時期ですので、他の病気があって疲れやすい可能性も考えられます。一度主治医の先生にご相談されることをお勧めします。
▽標準的な手術がなされたようで、手術した場所の再発はあまり心配しなくてよいと思います。ただ、人工血管が体になじむのに時間がかかりますので定期的な検査(超音波検査やCD検査など)が必要です。また、高脂血症や高血圧症などは動脈硬化症の重大な危険因子ですので、もともと罹っている場合、定期的な診察と服薬が必要となります。他の部の動脈硬化による病気の予防のためにも治療を続ける必要があります。
▽動脈硬化症の治療の基本は、やはり食事療法です。
@バランスのとれた食事をするようにし、一日30品目以上の食品を摂取するよう心がけて下さい。調理では動物性脂肪を減らし、植物性油を使用します。また調味料としての食塩は一日6〜8gにします。
A野菜、海藻、キノコなど植物繊維を多くとるようにして下さい。緑黄色野菜はビタミン、ミネラルが豊富で、一日300g以上とるようにしましょう。
Bたんぱく源としては、魚や豆類を中心とします。青身の魚はコレステロールを減らす効果があります。また貝、タコ、イカなどの軟体動物や魚の血合い肉の部分もコレステロールを減らす血圧を正常に保つ作用があります。豚、牛の脂肪は動脈硬化を招きやすいので、多く食べないよう気を付けましょう。
伊藤伊一郎(水沢市・外科医師) 胆江日日新聞社より