●大腸ポリープと大腸がん
今回は大腸ポリープと大腸がんのかかわりについて書きます。大腸ポリープや大腸がんは20年くらい前より増えてきていますが、7、8年前からは急激に増加しています。この原因としては、日本人の食生活が、肉や脂肪が多く食物繊維の少ない欧米型食生活に変化したためと考えられています。大腸は結腸(S状結腸、下降結腸、横行結腸、上行結腸、盲腸)と直腸にわかれていますが10年くらい前より結腸のポリープやがんが増えてきています。
★どうしてできるのか★
ポリープやがんは遺伝子の異常により発生します。大腸に関しては、食事の影響が大きいと考えられています。肉や脂肪を摂取すると、消化するために胆汁が分泌されます。胆汁は腸内細菌の作用を受けて二次胆汁酸に変化します。この二次胆汁酸がポリープやがんの発生を促進すると考えられています。しかし魚の脂肪に含まれるDHAやEPAは予防になると考えられています。
★できやすい部位は★
直腸に40%、次いでS状結腸に30%発生します。この二つの部位で70%を占めます。最近は直腸での発生が減少し、結腸での発生が増加しています。
★大腸ポリープの種類★
大腸ポリープにはがんになりやすい線腫(しゅ)と高齢者に多い過形成ポリープがあります。過形成ポリープはがんにはなりませんので、線腫が治療の対象になります。
★大きさとがん化率★
ポリープの大きさとがん化率に関しては、密接なかかわりがあります。4mm以下のポリープのがん化率は、0.1%です。5〜9mmでは10%。10〜19mmでは30%。20〜29mmでは50%です。しかしこの程度の大きさのポリープはがんになっていたとしても、ほとんどはがんが粘膜内にとどまっていますので、内視鏡で切除するだけで、治療を終了することができます。3cmを超えると、進行がんが増えてきます。
★症状は★
ポリープでは通常症状はあらわれません。しかしポリープが大きくなると血便や便秘などの便通異常があらわれます。さらに大腸がんになると、腹痛、便が細くなる、貧血などの症状があらわれます。
★診断は★
集団検診や人間ドックでは、一次検診として便に血が混じっているか(便潜血検査)をしらべます。便潜血陽性の場合や上記の症状がある時には大腸内視鏡検査やバリウムを用いた注腸透視検査をします。
★治療は★
大腸ポリープの治療は、内視鏡からスネア(金属の輪)を出して、ポリープをスネアでしめつけてから、高周波の電流を流し焼ききります。最近では、新しい手術法が開発されて、かなり大きいポリープも外来で手術できるようになりました。摘出したポリープは顕微鏡で病理学的に検査をします。ポリープにがんがあっても粘膜内にとどまっていれば、これで治療は終了となります。がんが粘膜下層まで達している場合、その程度により、リンパ節転移の可能性がでてきますので、外科的な手術が必要になります。
★合併症は★
大腸の壁は、非常に薄く、胃の壁5分の1くらいの厚さしかありません。焼ききるときに電流を流しすぎると簡単に穴があきます。必要最小限度の通電で焼ききるのですが、通電が足りなく生で切ると、切った瞬間に出血します。また、切った所に潰瘍(かいよう)ができますが、そこからも出血することがあります。出血しても、内視鏡の操作でほとんどの場合は止血することができます。
手術後、無理な仕事をしたりすると腸に穴があく(穿孔)ことがあります。この場合は入院が必要です。絶食、点滴等の治療で改善しない時は外科的な手術が必要になります。
9mm以下のポリープでは、合併症はほとんど起きません。10mm〜19mmでは10%。20mm以上では20%に何らかの合併症が起きます。
やはり、早期診断、早期治療が大切ですね。
★再発は★
ポリープやがんは、遺伝子の異常で発生するため、再発は起きることが多く定期的な検査が必要です。しかし、食生活をはじめとする、生活習慣を改めることにより、再発は減少します。
★予防は★
食生活では、肉や脂肪はほどほどにして、魚や食物繊維を多くふくんだ野菜、海藻や果物をふやすことが大切です。また、一般的ながんの予防には、たばこやお酒はひかえめにして、適度な運動をすることも効果があります。
大腸のがん検診は、他のがん検診と比較して、その有用性が証明されています。また、一次検診は便を調べるだけですので、積極的に検診を受け早期診断、早期治療をすることが大切です。検診や人間ドックで大腸ポリープが多数発見されます。ポリープの段階で、内視鏡切除することによって、大腸がんの発生を減少させることが期待できます。
加藤 泰之(金ケ崎町・内科胃腸科医師) 胆江日日新聞社より